腸と皮膚

ここでは腸と皮膚の関係について述べています。

 

実は腸と皮膚には深い関係があります。たとえば腸と皮膚は外界と接しているという点で共通しており、また、腸内環境の良し悪しは、皮膚の状態にも関わっているのです。

 

この腸と皮膚の関係性について臨床発達心理士の山口創氏は『腸・皮膚・筋肉が心の不調を治す』のなかで以下のように述べています。

 

 皮膚と腸には大きな共通点があります。それは外界と接しているということです。皮膚が外界と接しているということはすぐにわかりますが、前述したように胃や腸といった消化器官もじつは外界と接しています。

ちくわの穴の内側は空気と接していますが、それと同じように、胃や腸の内側も自分以外のものであると食物と接しているのです。

 

 口腔や鼻腔、膣などもそうですが、外界と接している部分には、微生物がたくさん棲みついています。そして、微生物が生きられるように栄養を与えてあげる代わりに、自己を外界から守ってもらいながら、微生物と共存関係をうまく築いています。(山口創『腸・皮膚・筋肉が心の不調を治す』p99)

 

また山口創氏は英国の皮膚病学者ジョン・ストークスとドナルド・ピルズベリーが腸とと皮膚の三位一体の関係を、「腸―脳―皮膚軸」仮説として提唱していることを著作のなかで紹介しています。この説に関して山口氏は、

 

 まず心理ストレスによってネガティブな情動が起きると、それによって腸内細菌叢が悪化して悪玉菌が増えます。すると腸管の透過性が高まり、それが皮膚の炎症につながるという説です。

 最近の研究で、この説が正しいことが次々と実証されてきました。たとえば、前出のビエネンストックは、マウスにストレスを与えて皮膚炎を起こしました。そして、そのマウスに乳酸菌の一種(ラクトバチルス・アシドフィルス)を含む調整乳を与えました。するとストレスによる皮膚炎が緩和し、発毛が回復したのです。(山口創『腸・皮膚・筋肉が心の不調を治す』p100)

 

と述べています。

 

このように腸内環境や腸内フローラの状態と皮膚の健康には深い関係性があると考えられます。

 

腸内環境の悪化と皮膚

 

また、肌荒れやアトピー性皮膚炎などの皮膚の疾患の場合は、腸内環境の悪化が原因のひとつであると考えられます。

 

 日本の研究でも、腸内細菌が産生した毒素が腸で吸収され、血流を介して皮膚に蓄積すると、表皮細胞の分化に異常をもたらし、皮膚のくすみや乾燥を引き起こすことがわかっています。

 そしてプロバイオティクスおよびプレバイオティクス(プロバイオティクスのはたらきを助ける物質)を摂取することで、皮膚の状態がよくなることも確認されています。

 このように、皮膚と腸のそれぞれの健康度、そして脳で感じる心理的ストレスは密接な関係があるのです。(山口創『腸・皮膚・筋肉が心の不調を治す』p101~102)

 

特にアトピー性皮膚炎に関して山口氏は、「ひどいアトピー性皮膚炎の人ほど、腸炎もひどいという結果も出ており、皮膚炎と腸炎は密接に関連しているようです」と述べています

 

 そもそも腸管の炎症はなぜ起きるのでしょうか?

 腸に棲む善玉菌は腸内での悪玉菌による異常発酵や腐敗を防ぐはたらきをしています。しかし、ジャンクフードばかり食べていたり、心理的ストレスが続いたりすると、腸内の悪玉菌が増えすぎてしまいます。すると、腸内では有毒物質が発生します。

 これが腸粘膜を刺激して炎症を起こすのです。特に、動物性たんぱく質によって腐敗が起きやすくなり、それが炎症を促し、そこからアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)として血液中に侵入していくのです。このように、腸内環境の悪化がアトピーの一因になるのです。(山口創『腸・皮膚・筋肉が心の不調を治す』p103~105)

山口創『腸・皮膚・筋肉が心の不調を治す』
山口創『腸・皮膚・筋肉が心の不調を治す』

つまり、腸内環境の悪化による血液の汚れが、結果的に皮膚のトラブルを引き起こすのです。そのため、いつまでもきれいで若々しい肌を保ったり、アトピー性皮膚炎を改善していったりするための鍵を握っているのは、腸内フローラの改善によって、腸内環境をキレイに保つことだと考えられます。そして、そのために特に大切になってくるのは「食物繊維」です。

 

腸と皮膚、そして生命

 

また、傳田光洋氏は、『第三の脳 皮膚から考える命、こころ、世界』などの著作のなかで、皮膚と腸を含めた臓器、そして生命との関係性について考察している点は興味深いところです。

傳田光洋『第三の脳 皮膚から考える命、こころ、世界』
傳田光洋『第三の脳 皮膚から考える命、こころ、世界』

 皮膚は身体を包むためにある。長くそう信じられてきました。しかし二十世紀の終わり頃から、皮膚の様々な能力が明らかになってきました。

 心臓や肺、腎臓、これらは私たちの身体の中で働いている臓器です。身体の欲求に応じて血液を循環させる心臓、その血液に環境から取り込んだ酸素をもたらす肺、血液の中の不用成分を取り除く腎臓、それぞれがその使命を果たし、私たちの命は保たれています。

 皮膚は外側にある「臓器」です。身体と環境のインターフェースとして、皮膚は外部から様々な情報を受け、その情報を身体の中に発信し、環境の変化に対して身体が適応できるようにしているのです。

傳田光洋『第三の脳 皮膚から考える命、こころ、世界』p10