消化管は泣いています

医学博士の内藤裕二氏による『消化管は泣いています 腸内フローラが体を変える、脳を活かす』では、炎症性腸疾患や大腸がんなど、様々な病気に対する腸内フローラ改善の有効性が、科学的にエビデンスに基づきながら詳しく書かれています。

 

内容的には専門的な用語も多く、難解な部分もありますが、その分、腸内フローラのことを専門的に知るにはうってつけの一冊だと言えます。

 

また主に水溶性食物繊維を摂取した際に、腸内細菌の発酵によって生じる「短鎖脂肪酸」の恩恵についても詳しく書かれています。

 

ちなみに「消化管」は「おなか」と読みますが、著者の内藤裕二氏は「はじめに」で、その「消化管(おなか)」について以下のように述べています。

 

 消化管とは、口から肛門いに至る管状の臓器です。

 口から順に口腔、食道、胃、小腸、大腸、肛門と名前が付いています。

 食べ物は消化管の中を運ばれ、消化、吸収され、残ったものは便となって排出されます。ところが、消化管は、手足のように自分で自由に動かしたりできませんし、今日はお肉を食べるので食べ物を消化する力を鍛えておこうとしても、良い手段はありません。常に受け身の状態にあるのが消化管です。

 日本では「がん」が死因の第一位です。その中でも、消化管のがんによって命を落とされる患者さんがたくさんいらっしゃいます。胃がんは団塊の世代、高齢者を直撃し、年間五万人程度の方が亡くなられています。食道がん、大腸がんも増えています。がんの中でも消化管のがんは頻度が高く、現在、それらの撲滅のためにはどのようなことが必要なのかについて、医療 関係者の間で多くの議論が行なわれています。
 がんだけではなく、他にもいろいろな病気が消化管にはあります。例えば、一〇人に一人の方が慢性の下痢や便秘で悩んでおられます。難病といわれる潰瘍性大腸炎、クローン病も急増しています。

 本書では、日本人の消化管環境が劇的に変化している現状を説明し、消化管の病気や不健康状態の原因に対する最新の情報を提供したいと考え、執筆しました。

(内藤裕二『消化管は泣いています』p2~3)

 

 大腸がん、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)などの罹患率(病気になること)は年々増加しています。
 日本人の腸内環境は、良くなる傾向がまったく見えてきません。こういった疾患は単一遺伝子の変異による病気ではないので、複雑なメカニズムが関与してい ます。特に、消化管は毎日摂取する食品、汚染物質、イオン放射線、薬剤などの多数の化学物質にさらされており、それらは直接的にあるいは腸内細菌での代謝 を介して、腸管粘膜細胞に影響を与えます。影響を与えるとは、遺伝子発現異常(エピジェネティックともいわれています)を誘導します。
 そのようなストレス化で、私たちは個人によって異なるそれぞれの病気に対する遺伝子そのものの変異があるため、病気の最終的な発症は個人により異なって くるわけです。今できることは、腸内環境がどのようなものにより悪化し、どのようなものにより改善するかについて科学的エビデンスを集積し、健康長寿のた めに努力する以外にありません。
 病気になりやすい遺伝子そのものを治すことよりも、病気になりにくい腸内環境をつくることが、個人の努力によってある程度達成できるようです。潰瘍性大 腸炎になりやすい疾患感受性遺伝子が日本人で五〇個同定され、あなたが、そのうちの五個をもっていると仮定しても、腸内環境を良くすることにより、病気に なることを阻止できると、私は考えます。

(内藤裕二『消化管は泣いています』p59~60)

消化管は泣いています
『消化管は泣いています』 内藤裕二 著 ダイヤモンド社 2016年

消化管(おなか)が泣いている昨今の現状

近年、消化管の不調は胃もたれに限らず、食道がんや大腸がんなどの罹患率は高まっていますし、また、若い年齢から発症してしまう潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患や過敏性腸症候群といった腸の病気も問題になってきています。

 

そのような腸の病気が急増している背景には食生活や生活習慣の急激な変化があることが要因のひとつとして挙げられるのかもしれません。

 

『消化管は泣いています』は、その昨今の現状に医師として関わっている内藤裕二氏による一冊であるため、通読してみると、日頃の消化管(おなか)のことを軽視し、食べ過ぎやお酒の飲み すぎが当たり前のようになっている現代のライフスタイルというものについて、深く考えさせられます。

 

もちろん消化管(おなか)が泣いている現状に対しての解決策も、腸内フローラ改善のことを中心にして、内藤氏によって示されています。

 

また帯にある、刺激性の便秘薬の乱用による黒ずんだ腸内環境を映した写真は衝撃的ですが、『消化管が泣いています』には若い女性を中心にした便秘の深刻な部分についても述べられているので、便秘に悩んでいる方にも手に取っていただきたい一冊です。

消化管は泣いています
内藤裕二 『消化管は泣いています 腸内フローラが体を変える、脳を活かす』  目次

第1章 消化管は泣いています/第2章 病気や健康に対する新しい考え/第3章 腸内フローラが生命科学のトップランナーに/第4章 腸内フローラが健康・病気を決める/第5章 腸内フローラを決めるのはライフスタイル/第6章 食品は腸内フローラによって、良くも悪くも変化します/第7章 機能性食品への期待と新しい展開/第8章 今日からできる消化管に着目した健康長寿対策